2018/10/05

■冒頭集:No Woman No Cry

 ピサの斜塔は完成する前から既に傾き始めていたという。よくみれば塔の上部は辻褄をあわせるように少しずつ角度を変えて、なんとかまっすぐにみせようとしてある。
 建設に際し、多くの思惑が交錯した結果だろうか。それとも、携った誰もがあまりにも何も考えなかったゆえの産物なのか。
 おそらくは後者だろうと睦美は思う。根拠のないのに思うのは、そうであってほしいという期待があるからだ。
長嶋有『泣かない女はいない』(2005年/河出書房新社)

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