一八八六年は奇妙な事件がおこった年である。それは説明されなかったし、説明をつけることもできないふしぎな事件で、きっと誰でもおぼえているにちがいない。港々の住民をさわがせ、また大陸の奥地の一般人までひどく興奮させた、とりどりのうわさは別としても、特別におどろいたのは海に関係のふかい人たちだった。ヨーロッパやアメリカの貿易業者、船主、船長、漁船長、あらゆる国の海軍士官、それからこれら両大陸の諸国の政府は、この事件を大いに重大視した。
ジュール・ベルヌ『海底二万里』1869:石川湧訳/1956/岩波少年文庫
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