2021/01/15

■沖からの 『奎』第16号より

鯨来る海より夜明け前の歌  下楠絵里

鯨好きなので鯨の句に目が止まってしまいがち。それはそれとして、「夜明け前の歌」とは? そんなタイトルの歌があるかどうか私には不明ということもあって、具体的な曲名ではなく、夜明け前にふさわしい歌、くらいの意味で、どんな歌だろうと思いだしてみると、これがそうと言い切るのはむずかしく、さあ、例えば、ロバート・ワイアットのあの不定形でぐにゃぐにゃした音と声が、自分にとって夜明け前かあ、などと。

鯨が〈来る〉方向から歌も来るように思え、これは、もう茫漠とした時間であり空気の震えだなあ、と。



掲句は『奎』第16号(2020年12月)より。

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