予約したDVDをTSUTAYAが2本ずつ郵送で送ってくれるサービス。その2本に勝ち負けを付けるという、ヘンテコリンなシリーズの第16弾。
過去の観くらべは、こちらに適当に。
テルマ&ルイーズ リドリー・スコット監督/1991年/アメリカ
対
哀しき獣 ナ・ホンジン監督/2010年/韓国
「テルマ&ルイーズ」は女性2人が週末旅行でちょっとハメをはずすつもりがとんでもないことに(殺人罪その他)。といっても、それほどシリアスではなく、笑いもありの逃亡記。いろいろ見せ場はあるが、なんといっても、フォード・サンダーバード1966年型。これを駆っての逃亡なのですが、映画の主役はこのクルマといってもいいくらい(荷物を積み込む旅のはじまりから、ラストシーンに至るまで)。
色もこれです。アメリカの砂漠の中のまっすぐな道、土埃にまみれたドライヴインに、まあなんとよく合うことか。当たり前といえば当たり前ですが、アメリカ車はアメリカを走るべき。
この映画、理屈を言えば、女性の抑圧(いろいろな意味のひどい目)からの解放、その挫折ということで、そのへんの押さえ方(シリアスな背景の作り方)がきちんとしていて、いわゆる「いい映画」。ただ、ちょっときちんとし過ぎている。
前半はややかったるく、主婦テルマが一皮むけて、ワルになっていく後半がおもしろい。ラストは、「おお、こう来るか。まあ、これしかないか」と。
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一方、この邦題、どうにかならんかな?という「哀しき獣」(原題はYellow Sea 黄海)。しばしば最悪・最低の邦題ってありますよね。したたがないのか。いちおうその分野のプロ(配給会社?)が頭を捻ってるんでしょうけれど。
ナ・ホンジン監督の第2作で、デビュー作「チェイサー」は、とてもおもしろかった。監督の手腕も感じた。で、このいわゆるクライム・サスペンスも期待して観た。
韓国映画はだいたいそうなんですが、暴力シーンがエグい。
この「哀しき獣」、依頼殺人が鍵で、途中、抗争・乱闘シーンも多いのですが、ピストルや拳じゃないんですよね。ナイフ(というか、もっと長い。出刃包丁のもっと凶悪な感じの包丁)。それから斧。
斧、ですよ、斧。
まあ、それはそれは血がハデに出る。殺されるほうも殺すほうも、血まみれです。そんな返り血ばっちり、生傷だらけの顔で街を歩いていたら、不審尋問されるだろ?というくらい、ブラッディです。
まあ、しかし、おもしろい。映画全体として、観ているこっちを引っ張っていってくれる感じ、吸引力、駆動力がとても大きい。サスペンス(謎と謎解き)部分は、ちょっと凡庸ですが、ともかく、破壊と暴力の迫力がすごい。
さっきまで食っていた骨で撲殺(原始時代!)、クルマの潰れ方もすごい(グシャグシャ)、主人公は逃げる逃げる、走る走る(こんなタフな走り、見たことがないくらい走る)。
第1作「チェイサー」と比べたら「チェイサー」のほうがきちんとまとまっています。推測するに、デビュー作で得た「優等」の評価に居心地の悪さを感じて、映画上の「やりすぎ」や「やんちゃ」や過剰・暴走をあえてやってやるぜ、という、そんな感じもあります。「じょうず」と褒められたら、「じょうずだけじゃない」ところを見せたい。そういう監督、そういう人って多いんじゃないでしょうか。
第1作の「チェイサー」のほうが出来がよく、観ていておもしろい、それはそうでしょう。しかし、「哀しき獣」の、めいっぱいさ加減、みたいなものは、愛してしまいたい。
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で、勝敗ですが、「テルマ&ルイーズ」のほうが「いい映画」なんだろうと思いますが、「哀しき獣」のほうが、長い時間(140分)とりあえず目が離せないということで、こっちの勝ち。
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ところで、今回はとりわけ奇妙な組み合わせのように見えて、やはり共通項は見つかります(不思議ですね)。それは「男女(夫婦)」という要素。
「テルマ&ルイーズ」における女性たちの鬱屈・不幸は、男性(愛する/愛される男性)から来ている(わかりやすくいえば、テルマのにとって最低の旦那)。「哀しき獣」の主人公の行動の動因になっているのは、妻の不貞。
いわゆるコインのウラオモテかも、です。今回の2本は。
人間のつがい、男性と女性、その関係というのは、しばしばきわめて困難。悩みの種。元凶にもなり得るのですね。
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