タイトルから想像して「理屈っぽいのかな」と心配しながら観る。序盤は実際そう。ところが、途中から話が転がりだす。
古くからある映画モチーフ=貴重品・財宝(カネ)をめぐってのドタバタ抗争というモチーフの展開となり、どこか懐かしく〔*〕、欧州映画な雰囲気を湛える。ここがいい。
役所広司は手堅く、永作博美が好演、ユースケ・サンタマリアがいい味。
結果、かなり好き。
それはそうと、これまで言い忘れていたけれど、黒沢清という人の「廃墟ラヴ」はそうとうなもので、ほとんどの映画でひつこく廃墟が登場する。この『ドッペルゲンガー』でも、ラスト近く、極上物件。
〔*〕ドッペルゲンガーというモチーフ自体がちょっと懐かしさを纏う。写真の発明によって世の物語におけるドッペルゲンガーの頻度が激減した、とはロラン・バルトの指摘(『明るい部屋』)。「もうひとりの私」の視覚的インパクトは減衰し、かわりに内面にかかわる主題が浮上した感。その点からして、この映画の前半は理屈っぽいわけです。
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