東京はどうやら、世界一住みにくい都会らしい。一杯10ドルのコーヒー、一回100ドルのディナー、一平方米10万ドルの地価…だけどそんな数字は僕らにとって、ほとんどなんのリアリティも持たない。家に帰ると和服の奥さんが玄関に坐っていて、茶室では釜がしゅんしゅんいい音を立てていてと、もはや昔の日本映画か外国人の日本好きの頭の中にしかありえないシーンと同じくらい、僕らの日常生活とはかけ離れた世界にすぎない。僕らの生活はもっと普通だ。木造アパートや小さなマンションにごちゃごちゃとモノを詰め込んで、絨毯の上にコタツを置いたりタタミに洋風家具をあわせたりしながら、けっこう快適に暮らしている。
都筑響一『TOKYO STYLE』(1993年/京都書院)
0 件のコメント:
コメントを投稿