2016/01/16

■冒頭集:長谷川四郎『ダンダン 海に落ちた話』

 町の本屋に行くと、店員がいて
「やあ、ツン。元気そうじゃないか。」
「おじさん、こんにちは」
 すると店員はわらいだして、いった。
「ハ、ハ、ハ。アヒルのひよこがよちよち歩き、コネコの子っこにいったそうだ。クワッ、クワッ、クワッ。おじさん、こんにちは。いい天気だね。」
 この町の人ではなくて、まだはたちになるかならないかで、ちかごろどこからかやってきた男で、旅の、また、アルバイトの学生のようだった。

長谷川四郎『ダンダン 海に落ちた話』(1972年/筑摩書房)


0 件のコメント: