2020/05/22

■実物大 ~『豆の木』第24号より

目の前の実物大のシクラメン  上野葉月

「実物大」というのだから、これはシクラメンそのものではなく、模型か何かなのか。いやいや、これはシクラメンであり、どんなシクラメンも実物大である、ましてや目の前にあれば、と、脱力するほどの「真理」を言うのみなのか。

いずれにせよ、俳句は、たいてい、この《目の前の実物大のシクラメン》から始まって/を背景にして、何かを言う・述べる・表現するものだろうから、その手前に存する、シクラメンという厳然たる事実・確固たる物質から一歩も出ずに断固としてとどまりつづけるこの句は、対俳句的に批評的であり、ものごっつい虚無でもありましょう。

スタイリッシュな句ですね。

掲句は『豆の木』第24号(2020年5月)より。



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