2020/05/26

■お家で映画 『ハーフ・オブ・イット』

映画館が閉まっていることもあって、ネット配信のドラマや映画を観る人が増えているそうです。私も、『全裸監督』見たさに Netflix に加入。すでに何本か見ました。やたら長い韓国ドラマに睡眠時間を削られたり(新味も刺激もないけど面白いんだわ)、米国のノンフィクション『タイガー・キング』がたいそう面白かったり。

そんななか、5月1日配信開始の『ハーフ・オブ・イット』(アリス・ウー監督)がとても良かった。

舞台は米国の片田舎、ハイスクールの3人(中国出身の女の子、学年一美人の白人、冴えない善良な男の子)の物語。最終学年と来れば、もう王道青春モノで、代筆が鍵と来れば、古典的ラブストーリー。なんだけれど、ちょっと違う。

映画レビューっぽいことはさておき(つまり粗筋やらキャストがいいとか)、映画って(映画に限らず)細かいところがピリッと巧いと、ほんとに愉しめるものだなあ、といまさらながら。それは、もろエンターテイニング志向でも、そうじゃなくいわゆる文芸的でリリカルな映画でも変わらない。

例えば、この『ハーフ・オブ・イット』だと、タコス・ソーセージがどんなに美味しいかを、セリフいっさい無しで、頬張る様子と表情で伝えるとか、ビデオを観る数秒の表情で男の子の善良さやイノセンスを伝えるとか(基本ちゃあ基本だけど、やたらセリフで説明するポンコツ映画も多いのでね)、主人公の女の子がキッチンで父親と並んで会話を交わすその後ろ姿で、ジーンズの右だけちょこっと中途半端にロールアップになっているとか(偶然か意図かはわからない)、もろもろ。ことばが重要な要素になっているだけに、そのへんの出来の良さが、ピシピシとこちらの快感に届く。

そうした細部が積み重ねられ、ラスト近くのキス、さらに車窓の別れへと、映画は進む。これねえ、ほんとに美しいキスシーン。そして、車窓の別れは、映画前半の伏線が効いて、出色。乗り合わせた乗客たちの(なにげない表情だけの)演技がそれぞれ最高の部類という、作りのていねいさ。

素敵な映画でした。


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