2020/11/11

■びゅびゅっと川柳

ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む  川合大祐

以前、この句を取り上げて、意味了解性の希薄・喪失をもっぱら指摘したのですが、もう少しこまかく言うと、擬音めいた部分を取り除くと、岳の壁に挑む、といった内容で、きわめて明快。散文として意味が通り過ぎるくらい通る。そこに「ぐびゃら」「じゅじゅ」「びゅびゅ」が挿入されて、意味がとたんに溶解してしまうというわけで、この仕掛けはシンプルかつ強力。

この3つは、文脈からすると、順に固有名詞、動詞、副詞の役割を果たしており(別の受け取り方も可能だが)、このあたりの作りはとても周到。発想一発ではなく、操作的で練り上げられている。

ああ、やっぱりこの句、好きだわ、ってことで、再度取り上げた。

ラヴ&ピース!


〔参考〕柳本々々:こわい川柳 第五十話
http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com/blog-entry-844.html

ここにも、同様の指摘がある(記事中盤あたりの「ヒント」の部分)。ちなみに、私はこの句に怖さは感じない(柳本々々の言う「こわさ」は通り一遍の怖さではなく、機微を含むものであることは承知の上で)。脳天を突き抜けるほどの快楽・享楽を見る。世界の祝祭・ことばの祝祭。

掲句は川合大祐句集『スロー・リバー』(2016年8月/あざみエージェント)より。



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