2013/01/10

観くらべ 第20番 ホモセクシュアルvs探偵

予約したDVDをTSUTAYAが2本ずつ郵送で送ってくれるサービス。その2本に勝ち負けを付けるという、ヘンテコリンなシリーズの第20弾。

リプリー アンソニー・ミンゲラ監督/1999年

ハメット ヴィム・ヴェンダース監督/1982年


「リプリー」 は、途中、「あれ? これ、前に観たような筋書きだなあ」と思い始め、「なあんだ、『太陽がいっぱい』のリメイクか」と。しかし、リメイクにしては違うところも多くて、もやもやしながら観終えた。調べてみると、「太陽がいっぱい」と原作が同じ、ということで、リメイクということではないらいしい。こちらのほうが「太陽~」よりも原作に忠実だそうだ。

主人公のリプリー青年(マット・デイモン)がホモセクシュアルである点も原作に忠実らしく、これを含め、「太陽が~」よりも、エスタブリッシュメントへの憧憬や成り上がり志向が切実。アラン・ドロンだと、〈何も持っていない〉感、〈何者でもない〉感はどうしても希薄。これだけの色男だから、成功パターンはいくつもあるでしょう、きっと、という感じです。その点、マット・デイモンは、〈チャンスに恵まれなければそのまま埋もれてしまう感〉、横溢。憧れの対象へと擦り寄っていく(肉体的にも)感じは、なかなか迫力がありました。

「ハメット」は、 ヴィム・ヴェンダースがコッポラに呼ばれて撮った探偵もの。ハードボイルド小説の祖、ダシール・ハメットは実際に探偵として働いた経験があり、映画は、このリアルに基づく。このあいだまで探偵をしていた探偵小説作家ハメットが、事件に巻き込まれていくというストーリー。

ヴェンダースが難渋しながら撮り終えた映画らしく、このときの苦い経験を元に、「ことの次第」が作られたそうだ。事件が起こることで物語が駆動していくタイプの映画(探偵映画はまさにそう)が、ヴェンダースは嫌だったのか?(じゃあ、なぜ引き受けた?)

こうした事情からすると、「ハメット」は失敗作になっても不思議はない(いやいやながら撮ったわけだからね。興行は振るわなかったそうだ)。

ところが、これが、素晴らしい映画なのですよ。倦怠感がほどよくまぶされ、中国娘人身売買からポルノフィルムでの強請りといった、いかにもな話を、主人公のハメットが「ね? いかにも、でしょ?」と皮肉に告げているようなメタな感触が備わってます。

なおかつ、それでもってエンターテイメント的要素が損なわれることもなく、かつての探偵物を観ているような愉しさがある。そんでもって、抑制がかえって粋でオシャレ。この映画、たいそう気に入りました。

というわけで、この勝負、ハメットの勝ち。


ハメットの小説は若い頃、わりあい読みました。当時(今でも、か)、チャンドラーの人気が高く、それも読んだけど、ちょっと反抗するように「ハメットのほうが渋い」てな軽薄な感じで、読んでいた記憶があります。でも、この分野、それほどハマることはなく、 だから、ロス・マクドナルドは読んだ記憶がない。

でも、また読みたくなりましたよ、ハメットとか、このあたりの古典を。



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