ポエトリー アグネスの詩(イ・チャンドン監督/2010年)
アベンジャーズ(ジョス・ウィードン監督/2012年)
いくらなんでも「観くらべ」に無理がありすぎる、という2本。
「ポエトリー アグネスの詩(うた)」は、孫の男の子とふたり暮らしの66歳の女性が主人公。あるとき「詩」の教室に通いはじめ、孫が起こした事件に関わり、そして…という、生真面目なストーリーを、途中、それほどの起伏・アクセントもなく描き、「うん、悪くない。やっぱりイ・チャンドンはいいな」てな感じで、こちらも淡々と筋を追う。
ところが、ラストの数分(のうちのある一瞬)で、観ているこちらは、どどっと持っていかれてしまう。こんなに急に、最後の最後で胸をかき乱され、涙までしてしまう映画は、あまりない。
ラストのアイデア一発で持っていくのとは違い、伏線が巧みで、ていねいに流れをつくっているからこそのラスト。
「アベンジャーズ」は、アイアンマン、マイティー・ソー(北欧神話の雷神トール)、キャプテン・アメリカ、超人ハルクといったアメコミ(マーベル・コミック)のヒーローが大同団結して地球の危機を救うという、正月興行そのものの内容。
たわいないといえば、たわいないが、悪くはない。充分に愉しい。スペクタクル的な満足感も得られる。
この手の映画のラスト数分は、クールダウン効果、めでたしめでたし感、「次がありそう」的余韻などが求められるのだろう。そのへんもよく出来ている。
で、こんな2本に勝敗をつけてどうする?という話ですが、 ポエトリー アグネスの詩の勝ち。
どっちも「凄い」のですが、「アベンジャーズ」の凄さは、このさきも定期的に味わえそう(もろアメリカ的なエンタメ映画は、このところどんどん盛り上がってますし)。一方、イ・チャンドンの「凄さ」は、イ・チャンドンでしか観られない気がします。
余談ですが、詩を習い始める主人公の「感じ」は、俳句愛好者には馴染みのある「感じ」です。例えば、上の写真、吟行みたいでしょう?
俳句好きの方には、また別の楽しみ方のある映画です。
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