2017/01/15

■冒頭集:鏡は

天然の水鏡から銅鏡へ、銅鏡からガラスの鏡へと、文明の階梯に対応した進化を遂げながら、鏡は古来様々な象徴に用いられることに耐えてきた。映すというそのいささか危険な機能の他に、輝くというさらに眩惑的な性質を備えたこの器具は、日常的な身辺の道具である以上に、本来の意味での「道具」即ち「成道の具」ともなり、あるいは逆に、自意識を増長せしめる破滅の具ともなった。
多田智満子『鏡のテオーリア』(1977年/大和書房)


0 件のコメント: