『里』2017年1月号より。
水涸るる鞄の中を混ぜてをり 西川火尖
探しものをするとき、よく鞄の中を混ぜる。けれども、この句を読むとき、目的を特定する必要はないのかもしれない。口の開いた鞄と腕の動き。入れるでも取り出すでもなく、混ぜる。
この行為は、渇水期となにかの因果があるわけでもない。けれども、この季語は、よく響く。よく鳴っている。
とくべつな彩で設えられているわけでもないのに、感興をもたらす句というものがあって、そこが俳句のコク深いところ、悪魔的なところなのだが、人には伝えにくい。
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