近づいて消えるみづうみ靴の底 山岸由佳
逃水の言い換えとも読める、この「近づいて消えるみづうみ」。「近づくと消える」ではなく「て」という軽い切れでつながれているので、散文的な意味の連なりから、すこしずれる。
いずれにせよ、湖が消えるという事態は尋常ではなく、そうした幻想的な事象のあとに来るのが「靴の底」。親しくカジュアルなブツは、前半との対照であると同時に、「近づいて」を受けて、主体の動きを強調する。
この「靴の底」、いいですねえ。
あるいは、スヴェン・ヘディン『さまよえる湖』で知られるロプノールもちょっと連想したりして、その場合も、「靴の底」へと、はるかなものから足下へと帰結する瞬間が、とてもおもしろいのであります。
掲句は『豆の木』第21号(2017年5月5日)より。
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