≫七吟歌仙:自転車の巻
≫承前
さて。ちょっと間があいてしまいました。
恋から離れるところからです。
剝製のやうに無害なソクラテス 之
前句《ふたりで金の孔雀を飼はう え》の孔雀から剝製。「やうに」ではなく、ソクラテスが無害な剝製になっちゃう、という作りでもよかったですね。
そういえば、根津から本郷方面へと降りていく坂の途中に剝製屋がありました。さすが東京大学のそば。由緒のある会社らしいです。
防腐剤から望月こぼれ 乙
秋・月の座。「剝製」から防腐剤。月から防腐剤がこぼれるという作りにもできますが、ここでは防腐剤から月。袋から満月がひとつころんとこぼれるようで、オツ。
猿酒を譲つてくれるかものはし オ
なぜ、かものはしが猿酒を持っていたのか? 謎です。
謎はだいじ。とりわけ歌仙では。
長椅子にぽつねんと虫売 気
「譲る」から、席、椅子。虫売りは、いつでもどこでもあやしいので、便利。歌仙のおけるユーティリティ・プレーヤー。「ぽつねん」はあまりに擦り切れた措辞ですが、まあ、許していただくとして、いよいよ、名残裏に突入。
歩を成らす人工知能負かすため 鯨
長椅子から縁台将棋を発想。AI棋士は時事的でもあります。
(つづく)
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