(レンタルDVD)
2005年、オーストリア・ドイツ合作。日本では2007年11月から劇場公開。
原題は「Our Daily Bread」。野菜やら肉やら食糧のさまざま生産現場の光景が、ナレーションもテロップも台詞も音楽もなく、ただただつぎつぎと画面に流れる。説明はいっさいナシ。
やってくれるもんです。広大な畑やビニールハウスや食肉工場がただ映っていて、絵が動くだけなのに、およそ90分、目が離せない。
あまりに何の変哲もない労働者の昼ご飯シーンに笑ってしまったり、岩塩採掘坑に「おおっ」と声をあげたり、大農園を農機が行くシーンはSF異星モノのようだと思い、ラスト近くの屠殺シーンはさすがにきつかったりと、つぎつぎ現れるシーンに興奮。
シンメトリーの頻出するスタイリッシュな画面は、鼻にはつかず、むしろ知的で好ましい(ヨーロッパっぽいなあ)。
観る前は、邦題(いのちの食べかた)やちょっとした予備知識から、エコっぽい映画なのかな?と思っていたが、観てみると、メッセージは(あるのだろうが)明示的でない、というか、「何も言わない」に近い(このあたりもヨーロッパ的洗練)。
ちなみに、邦題の「いのち」は、ダメダメダサダサ。予見を与えるという意味でも、この邦題はいけません。「ふだん食べているものがどこから来ているのか」をきちんと描いた映画。だからこそ岩塩採掘も屠殺も、同じテンションで描かれる。「いのち」などという嘘っぽい観念性のないところが、この映画の良いところです。
星4つ。
余談。この映画がヨーロッパっぽく知的/暗示的でスタイリッシュであるのと対極にあるのが、マイケル・ムーア。それ、ドキュメンタリー映画じゃなくて「意見映画」でしょw、というくらいに明示的。どっちも面白いから、困ります。
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