日独との戦争終結後の一九四五年、私は軍役から解放されて、ケンブリッジに戻った。大学の学期はすでに始まっており、多くの関連団体や集団が結成されていた。キール運河の砲兵連隊からケンブリッジ大学への旅はともかく奇妙なものだった。四年半離れていただけだったが、戦争の動勢の中で私はすべての大学の友人たちとの接触を失っていた。やがて、なじめぬ日々がだいぶ続いた頃、事情に迫られてではあったが、一九三〇年代の軍隊編成がいぜんとして生きていた戦争の最初の年に一緒に仕事をしていた男に会った。彼も軍隊から解放されたばかりだった。われわれは熱心に語りあったが、過去のことは話さなかった。われわれは自分たちを取り巻くこの新しい、奇異な世界にすっかり心を奪われていた。やがて、二人はまさに同時にこう言った。「実は、みんなはわれわれと違う言語を話しているんだ」。
レイモンド・ウィリアムズ1976『キイワード辞典』(岡崎康一訳/晶文社/1980年)
装幀:平野甲賀 |
2 件のコメント:
イイネ!
ええやろ?
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