2008/09/11
「ペン先における存在」
『モダン流行語辞典』をちょっとネットで調べてみると(はい、googleです。安易ですみません)、国立国会図書館の第107回常設展示「流行語あれこれ―時代を映す言葉たち―」(平成12年2月28日~4月21日)に出品されたことがわかった。
その解説にこうある。
昭和初期その実在をめぐり、物議をかもしたのが「ステッキガール」。「散歩の相手をする代償として料金を求める若い女」ということだが、資料にもあるように「ジャーナリズムのペン先における存在」であったようだ。
つまり、ステッキガールと呼ばれる女性が実際に存在したのではなく、記者が作り出した虚構というわけ。
ひょっとしたら一人や二人はいたかもしれない(モダン流行語辞典にあたると、その説明に「銀座に出現して」とある)。奇妙な商売の噂を耳にした記者が、散歩の相手なら「ステッキがわりか」と頓知をきかせて「ステッキガール」と名づけ、流行語辞典に載せる。筆(ペン先)が滑る、というやつだ。
読者のなかには、それがれっきとしたカテゴリーとして存在するかのように思ってしまう人もいれば、「ほんとに?」と眉に唾する人もいただろう。
なお、ガール関係では、「ガソリンガール」という立項もある。富安風生の句「退屈なガソリンガール柳の芽」(*註)の、あのガソリンガール。
ガソリン・ガール
最近自動車が激増して來たので、都會地の各所にガソリン・スタンドが出來、そこでガソリンを賣つてゐる。そこのガソリンの賣り子のこと。朝は八時から夕方六時まで、そのガソリン・スタンドの横の小さな家に一人で勤めてゐるので、色々と面白いローマンスが生れて來る。(モダン流行語辞典)
前半の説明はいいとして、後半、すごく余計なことが書いてある。「ローマンス」の箇所もまた「ジャーナリズムのペン先における存在」と見ていいのだろう。
(*註)参考記事:成分表 3「感情移入」上田信治(週刊俳句第4号-2007年5月20日)
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