『里』2016年8月号(2016年8月9日)より。
全身の化石が揃う夏野かな 仲田陽子
何の化石かは言っていないけれど、三葉虫やら魚よりも、やはり、恐竜。
「揃う」は実際に揃ったというのではなくて、揃うはずと読んだ。眼前の夏野で(その下の地層かもしれないけれど、ともかく、そこで)、その恐竜は斃れた。
ゆっくりとした足取りでやってきて、立ち止まる。からだが傾き、地面に向かって崩れ落ちる。ここは、スローモーションであります。音も大事。大音響とともに、砂埃が上がる。まぶたが閉じる。ここもスローモーション。
この想像、心躍る。
一方に、「化石」の語が伝える時間の経過。
瞬間と永続が同時にあること。
夏野の過ごし方として、最上の部類。
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