2016/08/30

■恐竜の最期 『里』2016年8月号の一句

『里』2016年8月号(2016年8月9日)より。

全身の化石が揃う夏野かな  仲田陽子

何の化石かは言っていないけれど、三葉虫やら魚よりも、やはり、恐竜。

「揃う」は実際に揃ったというのではなくて、揃うはずと読んだ。眼前の夏野で(その下の地層かもしれないけれど、ともかく、そこで)、その恐竜は斃れた。

ゆっくりとした足取りでやってきて、立ち止まる。からだが傾き、地面に向かって崩れ落ちる。ここは、スローモーションであります。音も大事。大音響とともに、砂埃が上がる。まぶたが閉じる。ここもスローモーション。

この想像、心躍る。

一方に、「化石」の語が伝える時間の経過。

瞬間と永続が同時にあること。

夏野の過ごし方として、最上の部類。





0 件のコメント: