2016/12/29

■眼 西橋美保の二首

何を見てわれは病みしか花のころ鷹匠町の眼科に通ふ  西橋美保

青空の奥に潜みし星々をそのまま眼鏡の函へとしまふ  同


歌集『うはの空』(2016年8月/六花書林):「夢前の鹿」12首の冒頭2首。

鷹匠町(たかじょうちょう)は兵庫県姫路市の地名。夢前川(ゆめさきがわ)は十代の頃、毎日のように電車で渡った川。そのときは何も思わなかったけれど、故郷を離れてから、夢前とは、なんとロマンチックな地名であろう! と。

さて、上に掲げた2首。

「眼科」って、不思議な事物なんですよね。妖しい感触。それが「花のころ」ともなれば、なおさら。鷹匠町という美しい地名を伴えば、なおさら。

隣り合う2つの歌が響き合うように、眼科が、ひかり(青空、眼鏡)を帯び、眼鏡ケースが魔法の函めく。

見えない星や「鷹」の一字にも、眼のイメージが沁みわたる。

うっとりとするほど美しいページです、この2首を収めた185頁は。

〔過去記事〕


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